臨床研究を始めたいPT・OT・STへ|統計が苦手な人のための勉強法と考え方
臨床研究をやってみたい。でも、統計が全くわからない。
セラピストの中には、そこで一歩踏み出せなくなっている人も結構いるのではないかと思う。
でも、統計が苦手だからという理由だけで、臨床研究を諦める必要はない。
そもそも、私たちは統計学者ではない。
もちろん、統計に詳しいに越したことはない。でも、統計学そのものを極めなければ臨床研究ができないわけではない。
私自身、学生の頃は統計学が本当にわかっていなかった。どうやって試験を乗り切ったのかも、正直よく覚えていない。
少なくとも大学院に入るまでは、統計についてほとんど理解していなかったと思う。そして大学院を卒業した今でも、統計を深く理解しているかと聞かれれば、全然そんなことはない。
それでも今は、臨床研究をするときに統計に対する大きな不安はない。
研究のアイデアが頭に浮かんだ段階で、どんなデータを集め、何と何を比較し、どのあたりの統計手法を使えばよさそうか、大まかに想像できる。
統計の真髄を語れるほどではないが、PTとして臨床研究をするうえでは、それほど困らない。
では、私は何をして今の状態になったのか。
とにかく論文をたくさん読んだ
一つは、論文をたくさん読むことだった。
うんざりしないでください(笑)
統計理論そのものを深く理解しようとするよりも、論文の中で「何を比較するために、どの統計手法を使っているのか」を意識して読んでいた。
これは大学院に行った人は分かると思うけど、義務みたいなもので、だから臨床だけをしながら。。。というのは限界があるかもしれない。
私の場合、英語に自信がなかったので、大学院に行く数年前から英語論文を読む練習をした。また別の記事に書こうと思うが、ポイントはジャンルを絞ること。例えば、「股関節のリハビリ」というより具体的なテーマに絞ること。
とにかく臨床にいても、少しずつ論文を読む努力はしたほうが良い。初めは日本語だけでもいいから。本筋は統計のためではない。けれど、段々と統計にも目を向けて欲しい。
論文を読んでいると、
- 何をアウトカムにしているのか
- そのアウトカムはどのような尺度なのか
- 何と何を比較しているのか
- どの統計手法を使っているのか
- その結果からどこまで考察しているのか
という研究の流れが見えてくる。
これを繰り返していると、研究デザインと統計手法の組み合わせが少しずつ見えるようになってくる。
一番役に立ったのは統計ソフトの本だった
今振り返って、最も実践的だったと思うのは、統計ソフトの使い方を書いた本を読むことだった。
私はSPSSという比較的有名で使いやすい統計ソフトを使っていた。最初に購入したのは、SPSSの基礎編のような本だった。
ちなみにこれ↓SPSSによるやさしい統計学。これは実際にSPSSを使う予定ではない人でも分かりやすいし、SPSSがある環境であればなおさら良い。
私の場合、この書籍から
この比較をするときはこの検定。
このようなデータならこの方法。
ということを、実際にSPSSを操作しながら覚えていった。
統計だけを机上で勉強するというより、実際に臨床研究を進めながら、その都度必要な統計を調べていった感じである。
実際に研究をしていると、
「このデータをどう解析すればいいのか。」
「この方法ではできないのか。」
「何をアウトカムにすれば研究目的に答えられるのか。」
といった問題が次々に出てくる。必要に迫られて調べるので、頭にも残りやすい。
研究で大事なのは、何を測ってどう比べるか
臨床研究を考えるときに非常に大事なのは、何を尺度として、何と比較するのかということである。
そして、その結果からどこまで考察してよいのか。
例えば、ある治療法の効果を調べたいとする。このとき大切なのは、まず「何をもって効果とするのか」を決めることである。
痛みなのか。歩行速度なのか。筋力なのか。ADLなのか。アンケート得点なのか。
そして、それをどう数値化するのか。そもそも数値化できるのか。
例えばADLの尺度としてFIMを使えそうだとしても、その目的で尺度として使ってよいのか、どのように扱うべきなのかを確認する必要がある。
ここが曖昧なままだと、その先の統計手法も決められない。
逆に言えば、ここがはっきりしていれば、統計に詳しい人へ相談するときも非常に話が早い。
とにかく尺度だけは理解しておいた方がいい
統計が苦手な人でも、最低限ここだけは理解しておいた方がいいと思うものがある。
それが尺度である。
- 名義尺度
- 順序尺度
- 連続尺度
まずは、この3つを理解しておく。
自分が使おうとしているアウトカムが、どの尺度なのかを考えられるようにしておく。
例えば、筋力をMMTとして表すのであれば順序尺度になる。一方で、ハンドヘルドダイナモメーターなどの機器で数値として測定するのであれば、連続尺度として扱うことができる。
しつこいようだが、これは本当に大事である。
最初から難しい統計を使う必要はない
臨床研究を始めようとすると、重回帰分析、多変量解析、一般化線形モデルなど、難しそうな言葉がたくさん出てくる。
それを見ると、自分には無理だと思ってしまう人もいるかもしれない。でも、最初からそんな難しいことをする必要はない。
極端な話、研究目的によってはt検定だけでも十分に研究になる。
もちろん、t検定にも使用するための前提条件があるので、何にでも使えるという意味ではない。
ただ、高度な統計を使っている研究ほど良い研究、というわけではない。シンプルな研究疑問に対して、適切なアウトカムを選び、適切な方法で比較する。
それだけでも、十分に臨床研究になる。
5回くらい研究すると、統計の世界観が見えてくる
これはあくまで個人的な感覚だが、違うテーマの研究を何回か経験すると、かなり見えるものが変わってくる。
5回くらい研究を経験すると、t検定だけではなく、相関分析、カイ二乗検定、分散分析、回帰分析など、さまざまな統計手法に自然と触れることになる。
すると、
このようなデータならこの解析。
この研究目的ならこのあたりの手法。
という感覚が少しずつ身についてくる。
最初から全部を理解しようとするよりも、実際に研究をしながら一つずつ覚えていく方が、私は理解しやすかった。
統計がわからなければ、人に聞けばいい
これは医療職のメリットだと思うのだが、医療現場には詳しい人が本当にたくさんいる。
医師、研究者、大学院経験者、研究をよくしているPTなど、統計に少し詳しい人は意外と身近にいる。
研究目的、アウトカム、比較したいものがある程度整理できていれば、統計手法について相談することもできる。
そこで教えてもらった方法を自分で調べ、統計ソフトを動かしてみる。わからなければ、また聞く。それを繰り返していけばいい。
研究を始める前から、すべてを自分一人で理解している必要はない。
統計が苦手というだけで、研究を諦めなくていい
もし今、何らかの研究をやってみたいけれど、統計が苦手だから無理だと思っているセラピストがいるのであれば、まずはアウトカムを何にするのかだけでも考えてみてほしい。
そのアウトカムがどの尺度なのかを確認する。
そこまでできたら、身近にいる研究に詳しそうな人に相談してみる。
SPSSなどの統計ソフトの基礎的な本を一冊読んでみる。
そして、実際に研究をやってみる。データをとってみる。(細かく言うと倫理委員会とかクリアすべきものはあるけれども)
すると、なにがしか見えてくるものが出てくる。
臨床研究をすると、自分が普段なんとなく行っている評価や治療について、改めて深く考えるようになる。
本当に効果があるのか。
何をもって良くなったと言えるのか。
自分の経験はどこまで正しいのか。
そうしたことを考える機会になる。臨床研究は、セラピストにとって本当に有意義な経験だと思う。
統計の壁は思ってるより高くはない!

